POINT:多焦点眼内レンズ
- 遠方、近方など複数にピントを合わせる。
- コントラスト感度が低下することがある。
- グレア・ ハローが起こることがある。
監修:東京歯科大学水道橋病院 名誉教授・ 特任教授 ビッセン宮島弘子
多焦点眼内レンズは複数の距離にピントが合うレンズです。
遠方から中間距離までピントが合う多焦点眼内レンズや遠方から近方までピントが合う多焦点眼内レンズも登場しています。
白内障手術後に眼鏡を着けたり外したりする機会を減らしたいと考えている方に多焦点眼内レンズはむいています。ピントが複数に合うため、例えばテレビをみながら手元の新聞を眼鏡なしに見ることもできますし、遠くの景色を見ながらパンフレットを見ることもできます。最近の日常生活ではパソコンやタブレット端末、スマートフォンなど中間から手元までさまざまな距離を見ることも増えています。生活環境が変化してきた昨今では多焦点眼内レンズを選択することにより眼鏡に依存しないアクティブな生活を取り戻すことが可能となってきています。
多焦点眼内レンズには様々なタイプがあり、希望する見え方やライフスタイルに合わせて眼内レンズを選ぶことの重要性は高まっています。
どの種類の多焦点眼内レンズでも、若いころのようにどの距離でもピントを合わせられるわけではありません。
眼鏡をかける頻度が高くても良いという方は単焦点眼内レンズのほうが良い場合もあります。
多焦点眼内レンズには様々なタイプがあり、希望する見え方やライフスタイルに合わせて眼内レンズを選ぶことの重要性は高まっています。どの種類の多焦点眼内レンズでも、若いころのようにどの距離でもピントを合わせられるわけではありません。眼鏡をかける頻度が高くても良いという方は単焦点眼内レンズの方が良い場合もあります。
多焦点眼内レンズには注意点もあり、すべての人がそのメリットを享受できるわけではありません。 まず、白内障以外に目の病気がある方は適応とならないことがあります。例えば緑内障や網膜の病気などで受診したことがある方は医師に相談しましょう。
複雑な光学部形状を持つ多焦点眼内レンズでは、コントラスト感度が低下することがあります。また、夜に街灯などの光を見るとまぶしく感じるグレアや光の周りに輪が見えるハローを感じることがあります。
時間の経過とともに軽減して気にならなくなる方も多いですが、夜間に車の運転を行う機会が多い方などは注意が必要です。
車の運転、デスクワーク、グレア・ ハロー
車の走行中は絶えず遠方・ 中間・ 近方とさまざまな距離に意識を集中する必要があります。この連続する視覚情報をより正確に処理できるのはどのような見え方でしょうか。2焦点の多焦点眼内レンズでは遠方も近方も視力が安定しているのですが、中間距離にあるスピードメーターやカーナビは、少しぼやけてしまい、細かい文字は読みづらいです。見える範囲が広い多焦点眼内レンズは中間距離の視力の落ち込みが少ないので、遠方のものが近づいても視覚に違和感は少なく、中間距離にあるスピードメーターやカーナビも鮮明に見やすくなっています。
2焦点の多焦点眼内レンズ(近方30cmに設定)では、目から30cmの距離にあるスマートフォンの画面が鮮明に見えていますが、50cmの距離にあるPCが見えづらくなります。一方、見える範囲が広い多焦点眼内レンズでは、PCも鮮明に見えるようになります。このように、多焦点眼内レンズは種類によって得意な距離が異なりますので選択する場合は自身が大事にする距離を把握することが大事です。
多焦点眼内レンズの種類によって、グレア・ ハローなどの光視症の強弱も違います。グレア・ ハローが発生する原因は、眼内レンズの構造の構造だけでなく目の状態や個人の敏感さなどにより変化するので一概に答えをだすのは難しいです。しかし、光学部の構造が複雑な多焦点眼内レンズでは少なからずグレア・ ハローといった光視症が術後に出ることは知っておきましょう。
多焦点眼内レンズにはいろいろな種類がありレンズごとに特徴が違います。ライフスタイルやビジネスシーンを思い返して自身にあった眼内レンズを選択しましょう。
確認事項 | 単焦点眼内レンズ:遠方に焦点 | 単焦点眼内レンズ:近方に焦点 | 多焦点眼内レンズ |
---|---|---|---|
日中の運転 | 〇 | × | 〇 |
夜の運転 | 〇 | × | △ |
読書・ スマホ | × | ◎ | 〇 |
演劇・ 映画 | ◎ | × | 〇 |
屋内の作業 | △ | △ | 〇 |
色の濃淡 | ◎ | ◎ | △ |
眼鏡の必要性 | あり | あり | ほぼ不要 |
グレア・ ハロー | 弱い | 弱い | やや強い |
レンズの費用 | 保険適用あり | 保険適用あり | 多焦点眼内レンズに関わる差額分を自己負担 |
※ 一般的な情報に基づいた表であり、それぞれの条件により異なる可能性があります。
眼鏡をかけて調整する生活に支障ない方は単焦点眼内レンズのほうがむいている場合もあります。
それぞれの多焦点眼内レンズの得意な距離や特徴を理解したうえでライフスタイルに合った眼内レンズを医師やご家族とも相談しましょう。