フラップ作製
フェムトセカンドレーザーにより、角度のあるエッジで固定力も高い、均一で薄いフラップを精密に作製します。
監修:みなとみらいアイクリニック 荒井宏幸
近視矯正手術・ 白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は国内の主な学会での発表や、眼科医に対する手術指導・ 講演も行っている。
詳細なデータに基づく治療により、最適な視力と質の高い見え方を実現する一人ひとりの目に合わせたカスタムメイドのレーシック手術です。
iLASIK™テクノロジーは一人ひとりにカスタマイズされた治療を可能にし、より多くの方に良質な裸眼視力をご提供します。
iLASIK™の良好な臨床結果によって、米国では、宇宙飛行士や戦闘機パイロットであってもLASIKを受けることが可能になりました。
※ レーシック適応の方であっても、角膜の厚みが十分にない方や波面収差の測定結果によっては、iLASIK™が適応できないことがあります。
「視力」と「見え方」は別なもの。重要なのは高次収差の矯正
「見え方」はいろいろな要素、「視力」「コントラスト」「色合い」「収差」「明るさ」「鮮明さ」がからんでおり、そのバランスによって見え方の質が異なります。
下の2枚の写真は、視力1.2という「見え方」の例です。同じ視力でも見え方が違うことが分かります。それは指紋と同じように、一人ひとりで異なる高次収差が目に存在するからです。
高次収差とは、光が眼球表面の角膜をとおり、水晶体、硝子体、網膜に到達するまでに存在するわずかな歪みが原因で焦点がずれてしまい、モノがぼんやりとみえてしまうことです。高次収差が少ない方は、くっきりクリアに見えますが、高次収差が多い方は、判別はできますがぼんやりとしか見えません。
従来のレーシック手術では、近視・ 遠視・ 乱視の度数のみでレーザーの照射量を変えて視力を矯正するので、「視力」は回復できても、「見え方」の“質”まで高めることは困難でした。
iLASIK™は、角膜を含め目全体の高次収差まで測定して矯正することで、くっきりクリアな「見え方」を目指したレーシック手術です。
目に入ってきた光が、目の表面の角膜をとおり網膜上で焦点を結ぶことによりモノを見ることができます。
しかし、光が眼球表面の角膜をとおり、水晶体、硝子体、網膜に到達するまでに大小さまざまな歪みがある場合、通過する場所や角度によって焦点がずれ、目から入ってきた光は網膜上の1点で結像しません。この光の焦点がずれる現象のことを収差といいます。
収差には、眼鏡やコンタクトレンズで矯正可能な歪み「低次収差」と、眼鏡やコンタクトレンズでは矯正することが難しい歪み「高次収差」があります。
従来のレーシック手術では、視力は回復しても、夜間に眩しく感じたり(グレア)、光が散乱してにじんだり(ハロー)、二重に見えたり、ぼんやりと笠をかぶったように見えるたりするなど、夜間視力の低下を感じることがありました。iLASIK™はこれらの問題を改善し、夜間のクリアな見え方を実現します。
暗い場所では瞳孔が開くため、レーシック手術を行って屈折を調整した箇所と調整していない箇所の両方からの像が網膜に同時に映ることが、夜間に眩しく感じたり(グレア)、光が散乱してにじんで(ハロー)見えることの原因といわれておりますが、ほとんどの方は手術から半年程度で改善されます。
質の高い見え方を実現するためには、目の詳細なデータを測定し、測定したデータから高精度な治療データを作成し、治療データのとおりに正確な眼位置にレーザー照射を行うことです。
目のデータを測定する装置の精度がよくなければ、どれほど素晴らしいレーザー技術を用いたとしてもデータ不足により良い結果は得られません。また、精度が高く詳細なデータがあっても、そのデータをレーザーに照射するためのプログラムとして活用できなければ意味がありませんし、プログラムどおりに正しい目の位置にレーザーを照射しなければ、良質な視力を手にすることはできません。
瞳孔径7mmにおいて1,257か所のポインタより目のデータを取得して、収差(低次収差・ 高次収差)を細部にわたり正確に測定します。
一人ひとりの目に存在する固有の特徴を再現性の高い技術を用いて解析し、さらに独自のアルゴリズムでカスタム化された治療データ(レーザー照射プログラム)として作成し、治療データをレーザー機器に反映させてレーザー照射に活用します。
わずかでもズレが生じると良質な視力を得られないばかりか、見えづらさにつながるため、レーザーは1,000分の1mm単位(ミクロン)の細かさで角膜を切除していきます。
治療データと眼位置を一致させ、治療中も眼球の動きを常時追尾し、治療データどおりに正確な位置にレーザーを照射します。
フェムトセカンドレーザーにより、角度のあるエッジで固定力も高い、均一で薄いフラップを精密に作製します。
治療データと治療領域を一致させる虹彩紋理認証テクノロジー(アイリスレジストレーションテクノロジー)、眼の動きを三次元で追いかける3Dアクティブアイトラッキングシステム、手術を短時間に抑え効率的な治療を行うためのVSSテクノロジーや角膜への負担を最小限に抑えるVRR*テクノロジーを用いた精度の高いレーザー照射を行います。
※ iLASIK™を含むレーシックは角膜の表面に施す手術であり、眼球内部への治療は行いませんので視神経を傷つけることはありません。
レーシック手術の術前検査では、レーシック適応の診断やレーザーによる矯正量を決定しますので、正確な検査結果を得ることが重要です。
レーシックが適応可能か否かは、日本眼科学会の「屈折矯正手術のガイドライン」で定める検査を行って決定します。
矯正量については、従来のレーシックでは、屈折検査(検査員による視力検査・ オートレフラクトメーター等)により近視・ 遠視・ 乱視の度数を測定して決定しておりましたが、iLASIK™では、波面収差計によって目に存在する高次収差まで測定して決定します。
問診 視力検査 屈折値検査 角膜曲率半径計測 細隙灯顕微鏡検査 角膜形状検査 角膜厚測定 涙液検査 眼底検査 眼圧検査 瞳孔径測定 角膜径測定
iLASIK™では、屈折検査の約25倍の精度のデータを測定します。
検査員による質問に対応し自覚的に近視、遠視、乱視の度合いを測定。
機器により他覚的に近視・ 遠視・ 乱視の度合い、角膜のカーブを自動測定。
眼球に光をあてて、網膜上を通る光の屈折のズレを計測して、近視、遠視、乱視などはもちろん、それ以外の高次収差まで測定。
眼球に光をあてて網膜から返ってきた光の歪みを波面(ウェーブフロント)としてセンサーで計測。再現性の高い技術で解析
目に存在する収差を解析し、新たな収差を誘発しないよう、一人ひとりの目に合わせた治療データ(レーザー照射プログラム)を作成します。そのためには波面収差計で測定したデータをもとに、目の収差をマップ化することが重要になります。フーリエ解析では、実際の形状に近い状態まで再現することが可能です。
(左)実際の形状。
(中央)ゼルニケ解析による再現:測定データを平均化して再現するので、なんとなく出っ張っているところと、なんとなく平らなところという程度の再現になります。
(右)フーリエ解析による再現:左のゆがみとほとんど同じ様に再現することができます。
一人ひとりの目に合わせた治療データ(レーザー照射プログラム)を0.01D単位で作成します。治療データをレーザー機器に反映させてエキシマレーザーの照射に活用します。
※ 参考情報:眼鏡やコンタクトレンズでの矯正は0.25D単位
D(ディオプター)は屈折力の単位(近視、遠視、乱視の度数)を表します。近視の度数はマイナス(-)、遠視の度数はプラス(+)で表し、数値が大きいほど近視や遠視の度合いが高くなります。
例えば、-1.0Dは裸眼の状態で1m先、-2.0Dは50cm先まではっきりと見える状態を意味します。
1m÷焦点距離1m=1.0 近視:-1.0
1m÷焦点距離50cm=2.0 近視:-2.0
軽度近視 -3.0Dまで
中等度近視 -3.0D~-6.0D
強度近視 -6.0D~-10.0D
最強度近視 -10.0D以上
フェムトセカンドレーザーは、1000兆分の1秒という超短パルスレーザーの赤外線レーザーを使用してフラップを作製します。
レーザーが角膜に照射されると、角膜組織が二酸化炭素と水に変化し、気泡が発生します。その泡が膨らんで隣の泡と結合することで角膜実質層を切断していきます。
フラップについて:iLASIK™手術の流れ
フェムトセカンドレーザーは
また、二方向(水平+垂直)からのカットにより、フラップの縁はほぼ垂直に作られます。フラップの縁が垂直に近いとマンホールの蓋(ふた)のようにピタリとはまるため固定力が高く、術後の密着が早いためフラップのズレやシワも起こりにくくなります。
角膜強度の安定性が高くなることは目にも安心です。
エキシマレーザーは熱をださずに高エネルギーで分子間の結合を断ち切り、組織を「蒸散」させます。
水に吸収されやすく、1ミクロン(1,000分の1mm)以内の限られた範囲にしかエネルギーが到達しないため、目の奥まで届いて網膜や視神経などの他の部位を傷つけることがないレーザーです。
コンピュータ制御により1,000分の1mm(ミクロン)という高精度な照射で角膜を切除して、屈折力を調整し視力を矯正します。
質の高い見え方を実現するには、その人の目だけにカスタムメイドされた照射プログラムをエキシマレーザーに反映させて、角膜への負担を抑えながら正確な位置にレーザーを照射する必要があります。
それを可能にしたのは、検査データと治療領域を一致させ、照射プログラムのとおりに角膜形状を変化させるレーザー照射技術です。
検査時と手術時とでは環境が異なるため、レーザー照射前には治療データと治療領域を一致させるために調整が必要になります。
例えば、検査時と手術時とで姿勢が異なることで眼球の回旋が起こります。そのため、レーザー照射時には回旋分を考慮して照射する必要があります。また、部屋の明るさが異なることで瞳孔の大きさも変化します。瞳孔の大きさが変化すると、瞳孔の中心もずれてしまうので、それも感知して補正する必要があります。しかし、こうした補正をせずに、本来の位置とは違う箇所にレーザーを照射した場合、高次収差が増加してしまいます。
高次収差まで矯正することが可能なiLASIK®では、正しい位置に照射することがとても重要になってきます。そのためiLASIK®では、検査時に収差の測定とあわせて虹彩の模様も撮影します。虹彩模様は、指の指紋と同様に一人ひとり固有のものであり、同一人物であっても左右で異なります。撮影された虹彩模様と角膜輪部の情報を、治療する眼球との位置照合に使用し、完全に一致したことを確認した上で、適正な場所にレーザーを照射します。
赤外線カメラにより、手術中のあらゆる眼の動きを三次元で追いかけます。常に瞳孔の中心からずれないように補正した上で、照射プログラムに基づいてレーザーを正確な位置に照射します。
眼球が大きく動いた場合は、レーザー照射を自動的に停止する安全機能が働くので、眼球が動いてしまっても安心です。
切除する角膜の位置や形状に合わせてレーザーの照射サイズ(0.65~6.5mm)を使い分けて手術を行います。これにより角膜の切除量を少なく抑えるとともに、手術時間を最短にします。
レーザーエネルギーを調節することで、角膜表面の温度を一定に保ちます。この技術により角膜への負担を最小限に抑えます。