医師監修

レーシック

監修:東京歯科大学水道橋​病院眼科 名誉教授・ ​特任教授ビッセン宮島弘子先生

レーシック
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レーシックとは

レーシックとは

東京歯科大学水道橋病院眼科 名誉教授・特任教授 ビッセン宮島弘子先生
この​記事の​監修

東京歯科大学水道橋​病院眼科 名誉教授・ ​特任教授 ビッセン宮島弘子先生

慶應義塾大学医学部卒業。​2003年より​東京歯科大学水道橋​病院 教授、​2022年より​現職。​白内障、​屈折矯正手術分野の​日本の​パイオニアと​して​海外からの​技術を​いち早く​導入し、​世界トップレベルの​白内障手術を​提供している。

監修ウェブサイト:「白内障のぎもん

レーシックとは

レーシックとは、​角膜屈折矯正手術の​一種です。

目の表面の角膜にエキシマレーザーと呼ばれるレーザーを照射して、角膜のカーブの形状を調整することで、屈折の角度を変え網膜上で焦点が合うように矯正する手術です。

光が網膜の手前で焦点を結んでしまっている

光が​網膜の​手前で​焦点を​結んでしまっている。

レーザーを照射して、角膜のカーブの形状を変化させる

レーザーを​照射して、​角膜の​カーブの​形状を​変化させる。

屈折の角度が変わり、光が網膜の一点上で焦点を結ぶ

屈折の​角度が​変わり、​光が​網膜の​一点上で​焦点を​結ぶ。

角膜の構造

角膜の​構造

角膜は​直径11~12mm、​厚さ約500~560μm​(日本人の​平均)の​透明の​組織で、​角膜上皮層、​ボーマン膜、​角膜実質層、​デスメ膜、​角膜内皮層の​5層構造を​しています。

角膜の​構造

角膜上皮層

角膜の一番表面にあり、外界からのバリア機能を果たしています。再生能力の高い細胞によって構成されており、約1週間で新しい細胞と入れ替わります。

ボーマン膜

角膜上皮層のすぐ下に位置し、コラーゲン繊維でできた非常に薄い膜です。厚さは10μmほどで、再生能力はありません。

角膜実質層

角膜の約90%を占め、主にコラーゲンやタンパク質で構成されています。再生能力はほとんどないので、実質層の透明性が損なわれると、視力低下をきたす場合があります。

デスメ膜

デスメ膜は薄くて強靭な膜です。実質層とともに角膜の形を維持します。基本的には再生能力があり、傷がついても修復します。

角膜内皮層

角膜を透明に維持するため、実質層に水分や酸素、栄養分等を供給するポンプの役目をしています。内皮細胞は再生能力がなく、一部の細胞が障害を受けると、隣接する細胞が膨張してカバーするため、一つひとつの細胞自体が大きくなり細胞数は減少していきます。

エキシマレーザー照射

フラップ作製箇所

角膜実質層に​エキシマレーザーを​照射する​ため、​皮膚などのように​日々​再生される​角膜上皮層、​再生されない​ボーマン膜、​一部の​角膜実質層を​フラップ​(ふた)と​して​めくります。

角膜実質層だけにレーザーを確実に照射します。角膜上皮層のなかに痛みを感じる知覚がありますが、上皮層を避けて実質層にレーザー照射をするので手術の痛みを感じることはありません。

エキシマレーザー照射箇所

エキシマレーザー照射箇所

角膜の​大半を​占める​角膜実質層は、​新しい​細胞に​再生しづらい​組織です。​レーシックでは​角膜上に​薄いフラップ​(ふた)を​作製し、​これを​めくって​角膜実質層の​部分に​エキシマレーザーを​照射する​ことで​角膜の​屈折力を​調整します。

フラップ作製方​法

角膜の​表層を​薄く​削って​フラップ​(ふた)を​作製する​方​法には、​一方​向​(水平)で​カットする​方​法​(マイクロケラトーム)と、​二方​向​(水平+​垂直)で​カットする​方​法​(フェムトセカンドレーザー)の​2種類が​あります。

一方向(水平)カットによるフラップ作製(マイクロケラトーム)の場合

一方​向​(水平)​カットに​よる​フラップ作製​(マイクロケラトーム)の​場合

短時間で​フラップ​(ふた)の​作製が​可能で、​刃物で​フラップを​作製します。

水平に一方向のみで角膜を切るので、均一な厚さの薄いフラップを作ることは難しく、切断面は辺縁が厚く、中心部はやや薄いフラップとなります。また、エッジ(フラップの端)の部分はなだらかな曲線になるため、術後にフラップがずれてしまう可能性があります。

二方向(水平+垂直)カットによるフラップ作製(フェムトセカンドレーザー)

二方​向​(水平+​垂直)​カットに​よる​フラップ作製​(フェムトセカンドレーザー)の​場合

コンピュータ制御に​よって、​フラップを​均一な​厚さで​精密に​作製する​ことが​可能で、​ムラの​ない​滑らかな​切除面を​形成します。

二方向からのカットが可能である為、エッジ(フラップの端)の部分はほぼ垂直に作られます。フラップのエッジが垂直に近いとマンホールの蓋(ふた)のようにピタリとはまるため固定力が高く、術後にフラップがずれる可能性も低くなります。

また、患者さまの目の状態に合わせて、個々の設定が可能で、より患者さまに合った手術が可能です。

フラップの​厚さ

使用する​医療機器にもよりますが、​一般的な​フラップ作製の​厚さは​以下の​とおりです。

フラップを薄く作製することが可能であれば、その分だけ矯正できる幅が広がります。

フラップの厚さ マイクロケラトームの場合 : 約100~160μm(マイクロメートル)

マイクロケラトームの​場合 : 約100~160μm​(マイクロメートル)

辺縁が​厚く、​中心部は​やや​薄いフラップ
フラップの厚さ フェムトセカンドレーザーの場合 : 約100μm(マイクロメートル)

フェムトセカンドレーザーの​場合 : 約100μm​(マイクロメートル)

均一な​厚さの​フラップ

角膜矯正の​度合い

角膜を削る量 近視の場合

角膜を​削る​量

角膜を​削る​量は​その方の​目の​状態(近視・ 乱視などの​度合い)に​よって​変わってきます。

度数の強い方は削る量が多く、度数が低い方は削る量が少なくなります。

近視の場合

角膜のカーブをよりゆるやかなカーブに削り、屈折力を弱くする

角膜の​厚さ

レーシックでは、​角膜を​削る​ことで​近視や​乱視などを​矯正します。​角膜は​削って​薄くなりすぎると、​角膜の​強度が​弱くなり角膜が​突出してしまうことがあります。​これを​避ける​ためには、​施術後にも​ある​程度の​角膜の​厚さが​必要に​なります。

術前の検査では、角膜の厚さの計測や角膜の形状を解析し、手術の可否および矯正量の限界を判断します。角膜が薄い人や矯正量が多い人はレーシック手術を受けられない可能性があります。

レーシックの​流れ

予約から​施術後までの​流れ

説明会​(無料の​説明会を​実施している​医療施設も​あります)

説明会では、​レーシックの​基礎知識は​もちろん、​医療機関の​医療サービスに​対する​姿勢や、​医師の​考え方などを​知る​ことができます。

1. 相談・ 検査予約

電話やインターネットで、相談および適応検査の予約をします。

適応検査前の一定期間はコンタクトレンズの使用を中止し、眼鏡に切り替えて頂きます。

2. 適応検査(手術数日前~数週間前)

手術を行う前に適応検査を行います。

これは、レーシックの手術の安全性を高めるための検査です。

※ 検査前・ 手術前の注意事項をご確認ください。

3. 術前検査(手術当日)

手術前の再検査を行い、手術内容の確認をします。

※ 検査前・ 手術前の注意事項をご確認ください。

※事前に手術前検査を済ませている施設では、再検査がない場合があります。

4. 手術

点眼麻酔を行います。

手術時間は両眼で15分前後になります。

5. 安静(手術当日)

術後、目を閉じてフラップ(ふた)が安定するまで、しばらく安静に過ごします。

6. 診察(手術当日)

医師の診察を受けて、問題がないことを確認します。

7. 帰宅(手術当日)

視界がぼやけたりしますので、細心の注意を払って帰ります。

8. 定期検査(手術翌日、および定期的 ※ 医師の判断による)

定期的に経過観察をします。

適応検査の​重要性

レーシックは、​角膜を​削って​視力を​矯正します。​個人の​目の​状態や、​目標視力、​ご本人の​希望などに​よっても​左右されますので、​眼科医に​適応を​判断して​もらうことが​重要です。

実施が​禁忌と​される​もの

・ 活動性の​外眼部​炎症

・ 円錐角膜

・ 白内障(核性近視)

・ ぶどう膜炎や強膜炎に伴う活動性の内眼部炎症

・ 重症の糖尿病や重症のアトピー性疾患など、創傷治癒に影響を与える可能性の高い全身性あるいは免疫不全疾患

・ 妊娠中または授乳中の女性

・ 自己免疫疾患、膠原病

・ 自己免疫疾患、膠原病

・ イソトレチノイン、塩酸アミオダロン服用者

実施に​慎重を​要する​もの

・ 向精神薬​(ブチロフェノン系向精神薬など)の​服用者

・ 緑内障

・ 全身性の結合組織疾患

・ ドライアイ

・ 角膜ヘルペスの既往

・ 屈折矯正手術の既往

上記項目に​該当しない方でも​受けられない​ことがあります。​まずは​眼科医に​ご相談ください。

適応検査項目

術前検査の​測定値は、​レーシック適応の​診断や​エキシマレーザーに​よる​矯正量を​決定しますので、​正確な​検査結果を​得る​ことが​重要です。

検査項目概要
(1)​問診
正確な​検査・ 診断を​するうえで​必要な​質問を​します。

(2)​視力検査

裸眼視力と​矯正視力を​測定し、​近視や​乱視などの​度数を​検査します。

(3)​屈折値検査

角膜の​屈折力を​計測します。

(4)​角膜曲率半径計測

角膜の​カーブを​測定します。

※ 角膜のカーブが平坦すぎたり、急すぎる人の場合は、マイクロケラトームのフラップ作製時にトラブルが起こりやすくなりますので、手術が受けられないこともあります。

(5)​細隙灯顕微鏡検査

角膜、​結膜、​水晶体など目の​状態を​調べます。

(6)​角膜形状検査

角膜の​形状・ ​特徴を​調べます。

※ 角膜の形状によっては手術が受けられないことがあります。

(7)​角膜厚測定

角膜の​厚みを​測定します。

※ 角膜の厚さが薄い場合には、手術が受けられないこともあります。

(8)​涙液検査

涙の​量に​異常が​ないか​調べます。

※ ドライアイが重症な人は、手術が受けられないこともあります。

(9)​眼底検査

網膜や​視神経の​異常を​調べます。

※ 網膜視神経に異常があった場合には手術が受けられないこともあります。

(10)​眼圧検査

緑内障が​ないか​調べます。

※ 緑内障の人は手術が受けられないこともあります。

(11)​瞳孔径測定

暗所で​瞳孔の​大きさを​測定します。

(12)​角膜径測定

角膜の​大きさを​測定します。

手術に​関する​注意事項

検査前・ 手術前

コンタクトレンズ制限

コンタクトレンズを装用されている方は、角膜の形状が変化してしまうため、検査前・ 手術前の一定期間は装用を中止して、角膜を自然の状態に戻す必要があります。

装用中止期間の目安

ソフトコンタクトレンズ:検査・ 手術日前の1~2週間

ハードコンタクトレンズ:検査・ 手術日前の2~3週間

アルコール制限

アルコールにより眼圧が上がることがありますので、多量の摂取はお控えください。

十分な睡眠をとり、目を休めましょう。

検査日・ 手術日

化粧制限

検査日:目元の化粧は控えましょう。

手術日 :レーザー機器に影響を及ぼす可能性がありますので、化粧、香水、整髪剤の使用は控えましょう。

運転制限

検査日および手術日は、点眼により視界がぼやけたり、まぶしさを感じたりすることがありますので、乗り物を運転しての来院は避けましょう。

服装制限

パーカー、タートルネック、セーターなどの服装は着脱の際に、目を強くつむる、毛くずが目に入る等の負担がかかりますので控えましょう。

※ コンタクトレンズ制限やその他の制限は医療機関によって多少異なる場合があります。詳細は眼科医とご相談ください。

手術の​流れ

レーシック手術とは、​角膜表面に​薄いフラップ​(ふた)を​作製し、​これを​めくり角膜実質層に​レーザーを​照射して​形状を​整え、​屈折力を​矯正します。

フラップ作製の流れ

手術時間

手術は​両眼で​15分前後です。

視力回復期間

経過時間概要
手術直後
視力は​回復しますが、​視界が​ぼやけている​状態です。​2~3時間で​落ち着きます。

点眼麻酔が切れるころゴロゴロすることがあります。

術後1~7日

術後の​違和感が​なくなり、​視界が​安定します。

術後​半年~1年

術後3ヶ月くらいまでは​視力の​変動が​ありますが、​半年から​1年ほどで​安定します。

手術後の​処置

レーシックで​治療した​部分は、​フラップ​(ふた)を​被せて​治癒させる​ことになりますが、​角膜上皮層が​治癒するまでの​期間は、​フラップが​吸着に​よって​張り付いているに​過ぎません。​手術直後で​あれば、​さらに​吸着の​程度は​低い​状態に​なっていますので、​以下の​注意事項を​守りましょう。

手術後の​注意

1ヶ月前後、​保護用メガネを​装着するなど、​目に​触らないように​気を​つけましょう。

角膜上皮が治癒するまでの注意事項

  • まぶたや目に強く触ったり、こすらないようにする
  • ほこりや砂が入らないようにする
  • 目に水を入れたり、こすったり、押さえたりしないようにする
  • アイラインなどのメイクを控える
  • 激しいスポーツなどを行わない
  • 清潔に保つ

角膜上皮層が再生治癒するまでは、感染症や炎症の危険性が高いので、炎症や感染を抑える点眼薬などは指示どおりに行うことが大切です。

万一、フラップがズレてしまった場合は、見え方が急に変わったり、ゴロゴロするなどの違和感がありますので、すぐに診察を受けましょう。

手術当日は、入浴(肩下からのシャワー程度は可能)、洗髪、洗顔、化粧、飲酒は控えましょう。また、目に十分な休息を与えるために、早めの就寝をおすすめします。

定期検査

どんな​手術にも​合併症の​リスクは​伴いますが、​レーシックも​例外では​ありません。

そのため術後の定期検査が大変重要となります。術後に何か問題が起きた場合も、早めに対処することでリスクを低減することができますので、必ず受診するようにしましょう。

定期検査の頻度

術後定期検査は、クリニックの規定や術後の経過によって違いがありますが、(手術)当日、翌日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月、半年後、1年後という頻度が一般的です。

定期検査の内容

合併症や副作用がないかをチェックし経過の観察が行われます。

※ 仕事、乗り物の運転、化粧、スポーツ、飲酒、入浴等の開始時期は眼科医にご相談ください。

合併症

レーシックの​合併症には​主に​次のような​ものが​あります。

合併症

ぼやけ​(視力の​変動)

手術直後は全体的にぼやけて、近くが見えにくくなることがありますが、徐々に改善します。ただし、年齢が高く、近視や乱視などが強かった場合は、視力が安定するまで1~2ヶ月を要することがあります。

ドライアイ

手術後2~3ヶ月は目が乾燥しやすい状態になりますが、ドライアイ治療の目薬を点眼することで緩和することができます。

※ もともとドライアイの人は、手術前のドライアイは治りません。

結膜下出血(白目の出血)

フラップを作製する際に眼球を固定するため、結膜の血管が傷ついて赤くなることがありますが(内出血の状態)、出血は1~2週間で自然に消滅します。

異物感・ しみる感じ・ 痛み

異物感やしみる感じがまれにありますが、手術の翌日には消失します。

夜間視力の低下

光に後光がさしたような輪が見える現象(ハロー)や、光が広がってまぶしく見える現象(グレア)を感じるようになります。術後時間が経つうちに慣れてきますが、最初の数ヶ月が気になる場合があります。

近視戻り

手術後しばらく正視の状態であっても、経年と共に屈折が変化して近視化することがあります。手術前の近視度数が強いほど、出現する可能性が高くなります。

近視の戻りがあり希望される場合は、再手術を行うこともあります。

感染

完全に角膜上皮層が治癒するまで、傷口から細菌が侵入して感染症を起こす可能性があります。細菌が目に入らないように注意し、炎症や感染を抑える点眼薬などを指示どおりに行うことが大切です。

フラップのずれ

フラップを術後早期に触るとズレが生じます。手術室でもとにもどせますが、視力改善がおくれたり、糸で縫わなければいけないこともあります。術直後は目をさわらないようにします。

不完全フラップ

フラップ(ふた)が手術計画よりも小さかったり、不完全な形に切れてしまった場合には、エキシマレーザーの照射に影響を与える可能性があるため手術を中止する場合があります。この場合1ヶ月~3ヶ月以上手術を延期します。

上皮迷入

角膜の表面の上皮細胞が、フラップ(ふた)の下に入り込んでしまう合併症です。まれに進行し、フラップ下の洗浄が必要となることがあります。

上皮欠損

角膜の表面の上皮細胞が一部欠損してしまうことがあります。高齢の人や以前に角膜に傷を作ったことがある人に起こりやすい傾向があります。医療用コンタクトレンズの装用や点眼治療で治りますが、視力回復にやや時間がかかることがあります。

層間炎症

フラップの間に腫れがつよくでることがあります。点眼で多くの場合対処できますが手術室で処置が必要になることもあります。

術後、違和感が出た場合は、早めに眼科医の診察を受けましょう。

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